2024.07.17
IVR (電話自動音声応答) とは?仕組みとメリットを解説
専任のカスタマーサポートを持たない企業の中には、ユーザーからの問い合わせ対応に追われ、本業にリソースを割きづらいという課題を持つところも少なくないでしょう。限られた人員で効率的にユーザー対応を行うためには、IVR(電話自動音声応答)の導入が解決策となり得ます。
本記事では、IVRの基本的な仕組みやメリット・デメリット、活用シーンをまとめました。また、IVRの種類ごとの導入スピードや費用相場についても解説します。
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- 目次
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- IVRとは?
- IVRの基本的な仕組み
- IVRの種類
- IVRの活用シーンは?
- かかってきた電話への対応(受電制御)
- かかってきた電話への対応(自動受付)
- 電話をかけるときの対応
- 他機能との連携
- IVRの導入による企業側のメリット
- 業務効率化や人手不足が改善できる
- 24時間自動音声で対応できる
- 不要な電話を回避できる
- スムーズなユーザー管理と販売戦略に直結する
- 保留時間が削減できる
- 情報漏えいのリスクを抑えられる
- IVRの導入によるユーザー側のメリット
- 疑問や課題を早く解決できる
- 電話での待ち時間を減らせる
- IVRの選定ポイント
- 機能を比較する
- 導入期間を確認する
- 利用料金を比較する
- 分析機能の有無を見る
- 必要なサポート体制があるかを見る
- IVRの運用におけるポイント
- 最適な音声シナリオを設計する
- 定期的なチューニングとアップデートを行う
- データ分析と効果を検証する
- ほかのチャネルやシステムとの連携を図る
- まとめ
IVRとは?
IVR(Interactive Voice Response:電話自動音声応答)とは、ユーザーからの電話に自動音声で応対・案内をする仕組みです。
IVRの基本的な仕組み
IVRは、ユーザーからの電話の発話やボタン操作などの情報をもとに、あらかじめ準備しておいた自動音声で案内を行います。IVRの基本的な仕組みは、以下のとおりです。
1.ユーザーから電話がかかってくると、自動音声でボタン操作などを案内する
2.事前に用意された自動音声案内やメニューオプションに従ってユーザーが操作を進めることで、問い合わせ内容の振り分けと次の音声案内が行われる
3.必要に応じて、その回答に適したセクションの担当スタッフに電話を転送する
IVRの種類
次に、IVRの種類とそれぞれの特徴を、以下の表にまとめました。
IVRの種類 | 特徴 |
---|---|
オンプレミス型IVR | ・各企業で専用装置を設置してシステムを構築 ・自社で運用/管理が必要 ・大企業で使用されるケースが多い ・自社のみで運用を完結でき、柔軟にカスタマイズできる |
クラウド型IVR | ・提供企業からサーバーを借りて利用する ・インターネット環境があればどこからでも利用可能 ・ゼロから構築しないため初期費用が安い ・オンプレミス型と比較して設定の自由度が低い |
ビジュアルIVR | ・Webサイト・アプリなどで案内を可視化するIVR ・SMSなどのメッセージ送信を電話で案内し、ユーザーにURLを確認するよう促す ・Webサイト上の指示に従って進めていき、問題を解決 ・チャットボット・FAQへの案内も可能 ・ユーザーの自己解決率が向上し、担当スタッフの工数削減にもつながる |
オンプレミス型とは、システムを自社の設備内で運用する仕組みです。オンプレミス型では企業が自社の建物内にサーバーやネットワーク機器を設置し、独自にシステムを構築、運用、管理します。
クラウド型とは、サーバー上にあるソフトウェアやストレージを利用して、データの保存や処理を行う方式です。クラウドを利用すれば自社内でシステムを構築・運用する必要がなくなり、コスト削減や導入スピードの向上が見込めます。
ビジュアルIVRは、Webサイトやアプリ上でユーザーの問題解決を試みるIVRの一種です。問い合わせ内容に応じた項目をクリックしていき、目的に適した電話や会員サイト、チャットボットなどに誘導する仕組みです。
企業の規模や予算、ニーズに合わせて最適なIVRの種類を選択し、ユーザー対応の効率化と満足度の向上を目指しましょう。
IVRの活用シーンは?
ここでは、企業のカスタマーサポートやコールセンターにおけるIVRの具体的な活用シーンについて説明していきます。
かかってきた電話への対応(受電制御)
かかってきた電話への対応にIVRを利用すれば、以下の機能により業務効率の改善が見込めます。
機能 | 説明 |
---|---|
振り分け | 問い合わせ内容に応じて、適切な部署へ自動転送する機能 |
あふれ呼対策 | 担当スタッフが対応できない場合、折り返しの連絡または予約を自動で案内する |
放棄呼対策 | 数回コールしても応答がない場合、別の番号へ転送して後ほど連絡する旨を自動音声で案内する |
録音 | 営業時間外や不在時の電話に自動応答し、メッセージを録音する機能 |
かかってきた電話への対応(自動受付)
定型的な対応しか求められない以下のような業務には、IVRの自動受付が有効です。
機能 | 説明 |
---|---|
FAQ自動応答 | よくある質問について事前に用意された音声データを使用し、自動的に回答を提供 |
会員情報の自動音声案内 | ボタン操作で選択された会員情報やポイント数を、音声合成技術を用いて自動的にお知らせ |
注文・応募の自動受付 | 商品注文やキャンペーン応募時にボタン操作や音声認識により、商品番号・数量・配送先などの必要情報を自動的に収集 |
災害情報の音声配信 | ユーザーが指定した地域の災害情報を、リアルタイムで音声に変換して自動的に配信 |
再配達のお申し込み受付 | 問い合わせ番号と希望の配達日時を、ボタン操作で入力してもらい再配達の手続きを自動化 |
クレジットカード情報を安全に取得 | ユーザーのボタン操作と音声入力から、クレジットカード情報を自動的に取得 |
電話をかけるときの対応
IVRでは、ユーザーへ電話を自動発信する活用方法も考えられます。
機能 | 説明 |
---|---|
告知 | プレゼントキャンペーンなどの告知を対象リストに基づいて自動発信し、ユーザーが電話に出たときに自動音声で知らせる |
電話をかける | ユーザーリストをもとに営業やサポートのフォローコールを自動発信し、自動音声によって案内する |
アンケート調査 | 対象リストに従って自動発信する。自動音声案内を用いてアンケート調査を実施し、データを収集する |
通知 | 商品の納期連絡・発送連絡・支払いに関する案内などを自動化する。リストに基づいて自動発信し、ユーザーが電話に出たときに自動音声でメッセージを伝える |
督促 | 未入金の督促などを、ユーザーリストをもとに自動発信し、音声案内する |
他機能との連携
SMSやWebシステムなどの機能とIVRを連携させ、以下のように活用する企業も増えています。
機能 | 説明 |
---|---|
IVR認証(本人確認) | 個人情報登録時に提供された電話番号を使用し、自動音声案内に従ってキーやパスワードを入力して本人確認を行う |
SMS連携(URL案内) | 電話での自動受付後、SMS経由で決済手続きに必要なURLを送信し、音声では伝達が難しい情報をテキストで提供 |
安否確認システムとの連携 | あらかじめ登録されたメンバーに対し、一斉電話連絡を実施。メンバーはボタン操作と録音入力により安否状況を報告 |
IVRの導入による企業側のメリット
ここからは、IVRの導入によって企業が得られる主なメリットを解説していきます。
業務効率化や人手不足が改善できる
IVRの導入によって、業務効率化や人手不足の解消が可能です。IVRの自動音声案内によって、担当スタッフの電話対応・情報共有のリソースを軽減できます。結果として業務効率の改善につながります。
24時間自動音声で対応できる
IVRを導入すると、時間外の問い合わせでも自動音声案内によって24時間365日いつでも対応が可能です。
日中は業務で忙しく、問合せの時間が取れないユーザーには大きなメリットとなるでしょう。企業にとってもユーザー満足度の向上に加えて、入電の混雑や機会損失を解消できます。
不要な電話を回避できる
IVRを導入すれば、業務を行う上で不要な電話への対応を回避できます。
スタッフのリソースを無駄に消費する電話として、「間違い電話」「営業電話」などが挙げられます。IVRでは電話をかけるとすぐに音声案内が流れるため、かけてきた側はすぐに間違った番号にかけたと気づけます。また営業電話をかけてきた人もあきらめてすぐ電話を切るため、余計な業務に社内リソースをとられません。
スムーズなユーザー管理と販売戦略に直結する
IVRを導入すれば、部署間での電話のたらい回しを解消してスムーズなユーザー管理が実現します。
大規模なコールセンター・カスタマーサポートでよく起きる問題が、「ユーザーのたらい回し」です。しかし、IVRで問い合わせカテゴリに適した窓口に誘導すれば、上記のような状況を回避できます。
二度手間の軽減や効率化は人件費の削減や人員配置の最適化につながります。スムーズなユーザー管理で業務を効率化し、生産性を向上させましょう。
保留時間が削減できる
電話の保留時間の短縮は、ユーザー・事業者の双方のメリットになります。
長い電話の待ち時間は、ユーザーをイライラさせてトラブルを大きくしかねません。こうした自体が頻発すると、売上や企業イメージの低下を招く可能性が高まります。
このような事態の解消にもIVRは有効です。
情報漏えいのリスクを抑えられる
IVRは、ヒューマンエラーによる情報漏えいのリスクを最小化できます。
IVRが導入されていれば、ユーザーは電話番号、生年月日、パスワードなどの個人情報を電話口のスタッフに口頭で伝える必要がありません。また、担当スタッフによる聞き違いや入力ミスを防げるのもメリットといえます。
IVRの導入によるユーザー側のメリット
IVRの導入はユーザー側にもメリットが大きいです。主に2点について解説していきます。
疑問や課題を早く解決できる
IVRを利用すれば、ユーザーの入電内容を把握してから専門担当スタッフにつなげるため、問題の解決が早まります。また、簡単な質問であれば自動応答で素早く回答を得られるため、ユーザーにとって利便性が高まるのがメリットです。
電話での待ち時間を減らせる
IVRの導入でユーザーの問題を把握できるため、結果として電話の待ち時間を減らせます。また、問い合わせ内容によって最適な窓口に案内が行われるため、何度も電話をかけなければならない事態も起こりづらくなります。
ほかに、郵便物の再配達などの手続きは自動音声のみで終了するため、ユーザーの利便性が高まります。
IVRの選定ポイント
ここでは、自社に最適なIVRを選定するためのポイントについて見ていきます
機能を比較する
提供している会社によって、IVRの機能は異なります。IVRの主な機能としては、以下のようなものがあります。
・SFA(営業支援システム)との連携
・全通話録音
・自動応答機能
・着信拒否機能
・分析機能
・コールエスカレーション(担当スタッフが対応できないタイミングに上位のスタッフに引き継ぐ機能)
・ACD(着信した電話を自動的に管理して適切な担当スタッフに振り分ける機能)
安価なサービスの場合は、上記の機能の一部しか備えていないケースもあります。自社に求められるユーザーの要求を明確にし、必要な機能が搭載されているサービスを導入しましょう。
導入期間を確認する
IVRを導入するまでの期間についても、あらかじめ確認してからサービスを選択しましょう。
オンプレミス型は自社内やデータセンターに物理的なサーバーを設置する必要があるため、導入には数ヶ月~半年かかる可能性があります。一方、クラウド型は1週間~1ヶ月程度で導入できるケースが多いようです。
早期にIVR 環境を構築したい場合は、まずクラウド型を導入できるかどうか確認し、機能が足りないのであればオンプレミス型を検討しましょう。
利用料金を比較する
IVRの利用には継続的に料金を支払う必要があるため、費用対効果を見極めてサービスを選択しましょう。料金は、「初期導入費用」「月額基本料」「付加機能使用料」によって左右されます。
また、回線数・稼働時間数・席数によって料金が加算される場合もあり、用途に合わせて最適なサービスを選ぶ必要があります。オンプレミス型・クラウド型・ビジュアルIVRそれぞれの料金の目安は、以下のとおりです。
IVRの種類 | 料金相場 |
---|---|
オンプレミス型IVR | 月額20~50万円 |
クラウド型IVR | 月額2~5万円 |
ビジュアルIVR | 月額2~10万円 |
できるだけ低価格ですぐに利用したい場合は、クラウド型のIVRの導入をおすすめします。
分析機能の有無を見る
ユーザー管理やユーザー満足度向上のためには、分析機能のあるIVRがおすすめです。
IVRの分析機能とは、問い合わせがあった電話の履歴や内容をデータとして保存し、分析できる機能です。どの時間にどのような問い合わせが多いのかなどの傾向を把握できると、自動音声案内の分岐メニューを設定する際に役立ちます。
電話内容の分析はユーザーニーズの把握にもつながり、商品・サービス開発・販売促進・広告戦略に活用が可能です。
必要なサポート体制があるかを見る
自社に必要なサポート体制のあるIVRサービスを選べば、トラブル時にも安心です。
特に初めてのIVR導入では、サポートが手厚いサービスを選べば、安心して利用できます。一部の提供企業は「IVRが専業ではない」「最低限のサポートしか提供していない」などの場合もあるため、事前に確認しましょう。
適切なサポートを受けられれば、IVRの導入から運用までのスムーズな進捗が期待できます。
IVRの運用におけるポイント
続いて、IVRを自社の事業に合わせて運用していくためのポイントについて解説していきます。
最適な音声シナリオを設計する
IVRを利用する場合、最適な音声シナリオの設計が重要です。
ユーザーからの問い合わせに対する返答のシナリオは、可能な限りシンプルでわかりやすくするのが重要です。わかりにくいシナリオ設計をすると、適切な部署へ問い合わせをつなげられない可能性が生じ、ユーザーにストレスを与えます。わかりやすいコールフローを作成するポイントは、以下のとおりです。
・専門用語を使わない
・シナリオの分岐をシンプルにする
・想定外の問い合わせに対応するために「その他」を設けておく
シナリオ設計が適切でない場合、結局は担当スタッフへ問い合わせが集中してしまいます。ユーザーの利便性と企業の業務効率化を両立するよう、慎重に設計しましょう。
定期的なチューニングとアップデートを行う
IVRの定期的なチューニングは、音声認識の精度向上やユーザーの満足度を向上させるために不可欠です。
最新のファームウェアを導入すればシステムの反応速度と効率が向上し、結果としてユーザー体験が改善されます。また、セキュリティ強化のためにも、ソフトウェアのアップデートは忘れずに行いましょう。
ただし、アップデートのプロセスにはリスクが伴うため、事前のバックアップなどの準備が肝要です。
データ分析と効果を検証する
IVRを一定期間運用したあとは、業務効率化やリソースの削減が実現できているかを確認する必要があります。
着信件数、通話時間、メニュー選択率・早期終了率・満足度調査結果など、さまざまな指標を分析しましょう。さらに、分析結果から課題を見つけて改善策を検討し、運用に組み込んでいくことが重要です。
ほかのチャネルやシステムとの連携を図る
IVRを効果的に運用するには、ほかのチャネルやシステムとの連携も重要なポイントです。チャットボット、メール、問い合わせフォーム、SAF(営業支援システム)などとの連携により、効率的な問合せ対応を実現できます。
複数の問合せチャネルがある場合、それぞれに適した問題解決の流れを設定できます。例えば、WebサイトのFAQを閲覧してからメール、問い合わせフォーム、電話番号を表示するといった形です。
IVRを効果的に運用して継続的な改善を行えば、ユーザー満足度の向上と業務の効率化の両立が実現可能です。自社の状況に合わせて、最適なIVRの運用方法を見出していきましょう。
まとめ
IVRの業務の効率化により社内リソースの確保が可能です。企業にとっては生産性向上、ユーザーにとっては問題解決までのスピードアップや待ち時間の短縮などのメリットがあります。また、人為的ミスを減らして安全にユーザーのデータ管理ができる点もIVRの大きな魅力です。
オンプレミス型・クラウド型・ビジュアルIVRなどの種類があり、自社に適したIVRを選ぶ必要があります。ソクコムのようなクラウド型のIVRは、導入スピードの速さや初期投資の少なさが大きな魅力です。
IVRを効果的に活用し、企業とユーザーの双方にとってメリットのある電話対応を実現しましょう。
ソクコムの導入事例もございます。詳しくは以下の記事をご覧ください。