【2026年10月施行】カスハラ対策|電話窓口でできる実務設計
この記事で分かること
- 2026年10月から事業主に義務付けられたカスハラ対策の9つの措置
- 9つの措置のうち、電話窓口の運用で形にできる対策
- 録音の告知・電話を切る基準・管理者への引き継ぎを組み合わせた運用の作り方
- 注意するとき、電話を終えるときに使える言い回しの例
- 担当者任せの対応と、仕組みで支える対応の違い
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等の言動のうち、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するもののことです。2026年10月1日からは、企業の規模にかかわらず、すべての事業主にカスハラ対策が義務付けられています。
事業主に義務付けられた9つの措置
厚生労働省の指針は、カスハラについて事業主が雇用管理上講ずべき措置として、次の9項目を示しています(出典:厚生労働省「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針について」)。
- 毅然とした対応と労働者を守る方針を明確にし、周知・啓発する
- カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する
- 相談窓口を定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 被害を受けた労働者に配慮する
- 再発を防止する
- 相談者のプライバシーを保護し、その旨を周知する
- 相談などを理由にした不利益な取扱いを禁止し、周知する
- 特に悪質なカスハラへの対処方針を定め、対処できる体制を整える
あわせて指針は、商品・サービスや苦情対応についての研修など、取り組むことが望ましい対策も示しています。カスハラの対象には、対面だけでなく、電話やSNSなどインターネット上の言動も含まれます。措置ごとの具体例やチェックリストは、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」にまとめられています。
電話窓口のカスハラ対応が担当者任せになりやすい理由
電話窓口では、電話を切ってよい基準や、誰に代わってもらうかが決まっていないことが多く、カスハラへの対応がオペレーター個人の判断に任されがちです。
基準がないと、オペレーターは「まだ切ってはいけないのでは」と迷いながら対応を続けることになります。難しい電話ほど経験のある人に回されやすく、負担が同じ人に偏っていきます。通話の録音が残っていなければ、あとから管理者が何があったのかを確認することもできません。
弊社独自調査「AI化の境界線に関する調査」(2026年3月/CS・コールセンター運営に関わる担当者1,012人回答)でも、88.4%が有人対応のみの体制に「限界」を感じていると回答しました(出典:AI化の境界線に関する調査(2026年))。
電話窓口でよくある場面
- 新人オペレーターが長時間の暴言を受け続け、電話を切るきっかけをつかめない
- 上長が離席していて、途中で代わってもらえない
- 後日、相手から「そんなことは言っていない」と言われ、やり取りを確認できない
どの場面も、指針の「対処の内容の周知」「事実関係の確認」「悪質なカスハラへの体制」にあたる準備ができていないことから起きています。
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9つの措置のうち電話窓口で実装できる対策
9つの措置のうち、電話窓口の運用で形にしやすいのは、対処の内容の周知、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止、悪質なカスハラへの体制の5つです。
| 措置 | 電話窓口でできること |
|---|---|
| 対処の内容の周知 | 電話を切る基準と、注意するとき・切るときに伝える言葉を決め、オペレーター全員に共有する |
| 事実関係の迅速かつ正確な確認 | 通話を録音し、あとから管理者が聞き直せるようにする |
| 被害者への配慮 | 管理者が対応を代わる、担当を変えるなどして、オペレーターをその電話から離す。必要に応じて産業医などの専門家に相談できるようにする |
| 再発防止 | 録音した事例をもとに、対応マニュアルや研修の内容を見直す |
| 悪質なカスハラへの体制 | 管理者に引き継ぐ流れを決め、一人で対応させない。暴行や脅迫など犯罪にあたり得る言動は警察に相談する |
方針の明確化、相談窓口の設置、プライバシーの保護、不利益な取扱いの禁止は、就業規則や社内規程で整える措置です。電話のシステムだけで義務を満たせるわけではないので、社内のルールづくりとあわせて進めます。
電話窓口の対策の仕組み|録音の告知と管理者への引き継ぎ
電話窓口では、IVRで録音を告知し、オペレーターが「対応が難しい」と判断した通話を管理者に引き継ぐ流れを作ると、一人で抱え込む場面を減らせます。具体的には次の流れで運用します。
- 着信時に、IVR(電話の自動音声応答)で、通話を録音することを案内する
- 用件別の番号分岐で、担当チームにつなぐ
- オペレーターは通常どおり対応する。暴言や同じ要求のくり返しが続いたら、決めておいた言葉で注意を伝える
- 注意しても続く場合は、保留にして管理者に引き継ぐ。管理者は、決めておいた基準に沿って、対応を続けるか電話を終えるかを判断する
- 通話の録音と対応の記録を残し、事実確認と再発防止に使う
指針は、十分に説明しても要求がくり返される場合に、一定の時間がたった時点で電話を切ることを、対処の例に挙げています。厚生労働省のマニュアルでは、話がこう着してから一定の時間(30分程度)を超える場合に電話を切る例が示されています。この時間はあくまで一例とされているので、自社の窓口に合った時間を決めて基準に書いておきます。電話の最初に判断して切るのではなく、説明を尽くしたうえで切るという順番も、あわせて基準に書いておきます。
「消費者センターに相談する」「弁護士に相談する」といった言葉は、正当な苦情の中でも出てきます。言葉だけでカスハラと判断せず、言動の内容や続いた時間で判断します。
問い合わせ窓口にソクコムのような着信IVRを取り入れると、録音の告知、用件別の振り分け、通話の録音を電話の入口でそろえられます。オペレーターは録音されている前提で落ち着いて対応でき、管理者もあとから録音を聞いて、何があったのかを確かめられます。

注意するとき・電話を終えるときの言い回しの例
言い回しを決めておくと、オペレーターは迷わずに注意を伝えられ、誰が対応しても同じ流れで電話を終えられます。次の例を、自社の窓口に合わせて言い換えて使ってください。
| 場面 | 言い回しの例 |
|---|---|
| 録音の告知(IVR) | 「品質向上とトラブル防止のため、この通話は録音させていただきます。」 |
| 1回目の注意 | 「大きな声でのお話が続きますと、ご用件を正確に伺うことができません。落ち着いてお話しいただけますでしょうか。」 |
| 管理者への引き継ぎ | 「上長に確認いたしますので、大変恐れ入りますが、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか。」 |
| 電話を終える前の予告 | 「このようなお話が続く場合は、お電話を終了させていただきます。」 |
| 電話を終えるとき | 「これ以上お話を続けることが難しいため、本日のお電話はここで終了させていただきます。会社としての対応は、あらためてご連絡いたします。」 |
「管理者への引き継ぎ」の言い回しは、厚生労働省のマニュアルで示されている例です。マニュアルでは、周りの人に相談するときは、電話の保留機能を使うことも示されています。
メリットと注意点
この仕組みを取り入れると、電話窓口には次のような変化が生まれます。
- 冒頭で録音を告知することで、相手の言動が激しくなるのを抑えやすいです。
- 電話を切る基準と引き継ぎ先が決まっているので、オペレーターが一人で判断しなくてすむ
- 通話が録音で残るため、「言った・言わない」にならず、事実関係を確認しやすい
一方で、導入時に注意したい点もあります。
- 録音した音声には、お客様の個人情報が含まれます。指針も、録音する際は個人情報保護法などを守り、顧客の個人情報を適切に扱うよう示しています。保存期間と、録音を聞ける人の範囲を社内で決めておきます。
- 正当な苦情までカスハラとして扱わないように、基準には暴言、脅し、長時間の拘束、同じ要求のくり返しといった具体的な言動を書いておきます。
- 入電数が少なく、管理者がすぐに代われる窓口では、電話を切る基準と引き継ぎのルールを決めるだけでも効果があります。システムの導入は、件数が増えてから検討しても遅くありません。
担当者任せの対応と仕組みで支える対応の比較
担当者任せの対応と仕組みで支える対応では、電話を切る判断、負担の偏り、記録の残り方に違いが出ます。〇は負担が少ない状態、△は一定の負担が残る状態を表します。
| 観点 | 担当者任せの対応 | 仕組みで支える対応 |
|---|---|---|
| 電話を切る判断 | △ オペレーター個人の判断に任される | 〇 決めておいた基準と言葉で注意し、続く場合は管理者に引き継ぐ |
| 負担の偏り | △ 経験のある人や、電話を受けた人に偏りやすい | 〇 引き継ぎの流れがあり、一人で対応し続けずにすむ |
| 記録 | △ 手書きのメモや記憶に頼りやすい | 〇 通話を録音し、あとから聞き直せる |
| 抑止 | △ 相手は録音されていることを知らない | 〇 IVRの冒頭で録音を告知できる |
電話窓口のカスハラ対策を始める4つの手順
電話窓口のカスハラ対策は、システムを入れる前に、基準とルールを決めるところから始めます。
- 過去の通話から、対応に困った事例を集める。どんな言動が、どのくらいの時間続いたかを書き出す
- カスハラと判断する言動と、電話を切るまでの流れ・時間を決める(注意の言葉→管理者への引き継ぎ→電話を終えるときの言葉)
- 録音の告知、管理者への引き継ぎ、記録の残し方を、IVRと電話システムで設定する
- 月に1回、録音した事例を振り返り、基準や対応マニュアルを見直す

まとめ
2026年10月1日から、カスハラ対策はすべての事業主の義務になりました。指針が示す9つの措置のうち、電話窓口では、電話を切る基準と言い回しの周知、録音による事実確認、管理者への引き継ぎ、録音を使った再発防止を運用で形にできます。正当な苦情と度を越えた言動を分けて扱い、オペレーターが一人で抱え込まない流れを作ることが、電話窓口のカスハラ対策の土台になります。まずは過去の通話から対応に困った事例を集め、電話を切る基準を決めるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 2026年10月から何が義務化されたのですか?
A. 改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、すべての事業主にカスハラを防ぐための雇用管理上の措置が義務付けられました。指針では、方針の明確化と周知、相談窓口の整備、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止、悪質なカスハラへの体制づくりなど、9つの措置が示されています(出典:厚生労働省 指針の概要)。
Q2. 中小企業も対象ですか?
A. 対象です厚生労働省の指針では企業の規模にかかわらず、すべての事業主が措置を講じることとされており、企業規模による区分は設けられていません(出典:岩手労働局)。
Q3. 電話やSNSでの言動も対象ですか?
A. 対象です。指針は、電話やSNSなどインターネット上で行われる言動も含まれるとしています。電話窓口だけでなく、メールやSNSの窓口でも同じ基準で対応を見直します。
Q4. 通話を録音してもよいですか?
A. 指針は、顧客とのやり取りの録音・録画を対処の例に挙げ、個人情報保護法などを守って顧客の個人情報を適切に扱うよう示しています。厚生労働省のマニュアルでは、必要があれば相手の了解を得て録音するとしています。IVRの冒頭で録音することを伝え、録音を望まない方への対応や、保存期間、録音を聞ける人の範囲も社内で決めておくと安心です。
Q5. オペレーターの判断で電話を切ってもよいですか?
A. 指針は、十分に説明しても要求がくり返される場合に、一定の時間がたった時点で電話を切ることを対処の例に挙げています。オペレーターが一人で判断するのではなく、切る基準と切る前に伝える言葉を事前に決めておき、できれば管理者に引き継いでから判断する運用が安心です。
Q6. 何分くらいで電話を切ってよいですか?
A. 決まった時間はありません。厚生労働省のマニュアルでは、話がこう着してから一定の時間(30分程度)を超える場合に電話を切る例が示されていますが、時間はあくまで一例で、各企業で決めるものとされています。自社の窓口の実態に合わせて時間を決め、基準に書いておきます(出典:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版))。
監修: 阿野 正貴
CTI製品に精通した、BtoC・BtoBテレアポ、コールセンター拠点立ち上げの専門家。急成長ベンチャー企業のコールセンターにてテレアポスタッフとして入社後、1年以内にトップ成績を上げ、BPO事業のアウトバウンド・インバウンドのコールセンター拠点立ち上げ責任者に抜擢。最大100席以上の大規模拠点をゼロから複数立ち上げた実績を持つ。2021年Foonz株式会社入社後、CTIツールの営業拡販、CPaaS・CTI製品開発の監修等に携わり現職。
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